最近よく聞く「AIエージェント」とは

ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及し、仕事でAIを使うことも珍しくなくなってきました。

そして最近、よく聞くようになったのが「AIエージェント」という言葉です。

  • 普通のAIと何が違うの?
  • ChatGPTもAIエージェントではないの?
  • 結局、何ができるようになるの?

今回は、AIとAIエージェントの違いを、製造業の仕事を例に考えてみます。


AIは「質問に答えてくれる」

現在よく使われている生成AIは、人から指示を受け、その内容に対して回答を生成することを得意としています。

例えば、

  • 「この議事録を要約して」
  • 「この文章から問題点を抽出して」
  • 「このExcelデータを分析して」

とお願いすると、AIが内容を理解して回答してくれます。

非常に便利ですが、基本的には次のような流れです。

人が指示する AIが考える AIが回答する

その回答をもとに、次に何をするかは人が判断します。


AIエージェントは「目的に向かって仕事を進める」

一方、AIエージェントは少し考え方が違います。

人から一つひとつ作業を指示されるのではなく、与えられた目的に対して「次に何をすればよいか」を考えながら仕事を進めます。

そのために、データベースを検索したり、社内システムを操作したり、必要な情報を集めたりと、さまざまなツールを利用します。

🧠生成AI「頭脳」

渡された情報をもとに考え、答えを返す。情報を集めるのも、次に動くのも人。

🧠🦾AIエージェント「頭脳+手足」

考えるだけでなく、ツールを使って自ら情報を探し、システムを操作して仕事を進める。

AIが「頭脳」だとすれば、AIエージェントは「頭脳+手足」を持った仕組み

と考えると分かりやすいでしょう。


製造現場で考えると、違いが分かりやすい

例えば、製造中の製品に「キズ」が発生したとします。

原因を調べるため、現場では、

  • 前にも同じような不具合はなかったか?
  • 加工条件は前回と違っていないか?
  • どの設備で、いつ加工したのか?

といった情報を一つずつ確認していきます。

ところが、必要な情報が一か所にまとまっているとは限りません。

📋
不具合履歴
品質管理システム
🏭
製造実績
基幹システム
📊
加工条件
Excel
📷
現場の写真
共有フォルダ

不具合履歴は品質管理システム、製造実績は基幹システム、加工条件はExcel、現場で撮影した写真は共有フォルダ、過去の対策内容は紙の報告書……ということも珍しくありません。

通常のAIを使う場合

人が必要な情報を集めてAIに渡し、「この情報から考えられる原因を教えて」と質問します。

AIは渡された情報をもとに、原因の候補や確認すべきポイントを回答してくれます。

AIエージェントを使う場合

「この不具合について調べて」と目的を伝えます。

するとAIエージェントは、目的を達成するために必要な作業を考えます。

  1. 対象製品の製造履歴を確認する
  2. 過去の類似不具合を検索する
  3. 材料ロットや加工条件を確認する
  4. 関係する写真や報告書を探す
  5. 調べた情報を整理して提示する

このように、AIエージェントは単に質問に答えるだけではなく、複数のシステムやツールを使いながら、目的に向かって仕事を進めていきます。

通常のAIでは、

人が情報を探す AIに渡す AIが答える

だったものが、AIエージェントでは、

人が目的を伝える AIが必要な情報を探す AIが整理して結果を返す

という形に変わります。

製造業には、図面、製造実績、加工条件、不具合履歴、見積情報など、すでに多くの情報が蓄積されています。

AIエージェントの大きな可能性は、これまで人が行っていた「いろいろなところを調べて、情報をつなぎ合わせる仕事」を支援できることにあります。

※実際には、AIエージェントが社内システムやデータを利用できるよう、あらかじめ接続や権限などの仕組みを用意する必要があります。


AIとAIエージェントの違い

ここまでの違いを整理すると、次のようになります。

一般的な生成AIの利用 AIエージェント
主な役割 質問への回答・生成 目的達成のために仕事を進める
人の指示 作業ごとに指示 目的を指示
情報収集 人が情報を渡すことが多い 必要な情報をツールで探す
システム操作 基本的には人が行う 許可されたツールを使って操作できる
判断 与えられた情報から回答 状況に応じて次の作業を判断する
大きな違いは「人がAIを使って仕事をする」のか「AIがツールを使って仕事を進める」のか

AIエージェントは「次のDX」になるかもしれない

これまでのDXでは、人がシステムを操作することが前提でした。

システムが増えて便利になっても、必要な情報を探すために複数のシステムを開き、それぞれを使いこなすのは人です。

AIエージェントが普及すると、この関係が変わる可能性があります。

人がすべてのシステムの操作方法や「どこに何があるか」を覚えるのではなく、「この不具合について調べて」と目的を伝えると、AIが必要なシステムや情報を探し、仕事を進める。

そんな使い方が、これから少しずつ現実のものになっていくと考えられます。

ただし、活躍には前提がある

AIがどれだけ賢くなっても、必要な情報が紙だけに残っていたり、ベテランの頭の中にしかなかったりすれば、その情報を活用することはできません。

製造履歴、不具合事例、図面、加工条件、作業ノウハウなど、現場にある情報をデジタル化し、必要なときに取り出せる状態にしておくことが重要です。

今からできること
📂 現場にある情報をデジタル化し、蓄積していく。紙の報告書やベテランの頭の中にある情報を、取り出せる形にする。
それは現在の業務効率化にもつながる。AIエージェントを待たなくても、情報が探しやすくなる効果はすぐに出る。
🤖 将来AIやAIエージェントを活用するときの土台になる。蓄積してきた自社の情報が、そのまま活きる。

「AIエージェントはまだ先の話」と感じる企業も多いかもしれません。

しかし、だからこそ今からできることがあります。まずは現場にある情報をデジタル化し、蓄積していくこと。それは現在の業務を効率化するだけでなく、将来AIやAIエージェントを活用するときの土台にもなります。

AIが「人の質問に答える道具」から、「人と一緒に現場の仕事を進める存在」へ変わっていく。

そのとき、これまで蓄積してきた自社の情報が、大きな力になるのではないでしょうか。

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